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恋の行方を探してください【完結】
第48章 【四十八話】脱出
 美哉は固まったまま、男性を見上げていた。男性も先ほどから表情を変えることなく、美哉を見下ろしている。
 そうやってどれだけ見つめ合っていただろうか。
 先に動いたのは、男性だった。
 二歩、三歩と美哉に近寄ると、じゅうたんの上に跪き、美哉の顔を覗き込んだ。

「美哉……?」
「あの……?」

 夢の中で見たけれど、名前も分からない、男性。実在しているとは思わず、美哉はまじまじと男性を見つめた。

「……あなた、だれ、です、か」
「紫紺から聞いていたから覚悟をしていたけれど……俺のことも忘れてしまっているのか」

 男性はそう言うと、ようやく表情を崩した。だけどそれは泣きそうで、美哉が戸惑った。

「……忘れ去りたいと思われるほど、俺は散々、美哉にひどいことをしてきたってことか」

 男性は頭を振ると、美哉からゆっくりと離れていった。

「謝って済む問題ではないと分かっている。だけど、謝らせて欲しい。美哉、済まなかった」
「あの……? あなたは私になにかしたのですか」
「あぁ、たくさんした。許して欲しいとは思わない。だけど、俺のことを思い出して欲しい」

 思い出せと言われても、美哉は夢の中で見たことしか思い出せない。

「……前のように側にいて欲しい」
「私……あなたの側にいたのですか」
「あぁ。嫌いだって言いながら、不甲斐ない俺の側にいてくれた」
「嫌いなのに……?」

 男性はそう言うと、苦笑した。
 どうしてだろう、男性の笑みを見て、美哉の心臓はどきどきと音を立て始めた。

「……まずは帰るか」
「帰る? 紫紺のところに?」
「紫紺のところに帰りたいか?」
「……よく分からないけれど、私は紫紺にお世話になっているみたいだから。いきなりこんなところに連れて来られて、紫紺に心配を掛けてるから」
「…………そうか、紫紺がいいのか」

 男性は切なそうな笑みを浮かべると、部屋の外へと視線を向けた。
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