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嫌いじゃなかったの!?
第10章 9ページ目。
ここ1週間は、凌とまともに話していない。
凌のことは「佐伯さん」と呼んで、無駄話もしない。
ただ元に戻っただけだ。
積み重ねて来たものをゼロにしただけ。ただそれだけ。
なのにどうしてこんなに、苦しいんだろう。
私は覚えている。
まざまざと思い出せる。
凌の声、匂い、暖かさ、癖、笑顔。
たくさん思い出せる。
でも思い出したくないんだ。
決心が、鈍ってしまう。
職場で凌の笑っている姿を見ると泣きそうになる。
最近、同僚に営業スマイルをしなくなって来た凌。
職場に慣れて来たのか、それとも、信用したのか。
そんな凌の、最近までは私しか知らなかった凌姿に、私は抱きつきたくなってしまう。
抱きしめて欲しくなってしまう。
だから思い出さない。
考えない。
関わらない。
そうしたら私は、もう凌のことはどうでもよくなる。
でもそうしたら、たまらなく苦しい。
ある思いが溢れそうになる。
泣きじゃくってしまいそうになる。
私はいつからこんな強欲になってしまったんだ。
誰かの、救いの手が欲しい。

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