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おにいちゃん、おしえて。
第10章 おにいちゃんと、いっしょ。
――昔のことを、思い出してしまった。

あれは、何年前のことだろう。


英司はブランドのビジネスバッグを片手に、仕立てのいい細身のスーツを身に纏っている。
オフィスの喫煙スペースで、空に真っ白い煙をふかした。

上がって行く煙を見ながら、思い出すと切なくなって胸が締めつけられる、セーラー服姿の幼なじみを思い出す。


あれから。
何人かの女性とはつきあった。

でも……どれもこれも、違うんだ。
清花の時みたいに、あんなに胸が苦しくなって、全身で求めていたようなあんな気持ちは、もうない。
昔から兄弟のように育った彼女とは、たった二晩の間の出来事なのに、今も心の深い部分に刻み込まれている。


清花の父の涙は、思い出せば胸が詰まる。
そして、正直なところ、旅行中清花とセックスをしていたことが、家族にバラされるのだろうかと、少なからず身構えていた自分もいた。

今となっては、バラされたからって何なんだと当時の自分に言ってやりたいぐらいだが。

あんなに好きだったのに、今でも忘れられないぐらいなのに――あの時、清花の手を離さなければ、どうなっていたんだろう。

おじさんに、「清花を大事に思っています」とはっきり言えたら、どう変わっていたんだろう。

10年も経ってしまって、今更、どんな顔して会いに行けるんだ。

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