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サキュバスちゃんの純情《長編》
第8章 兄弟の提携

「すみません、お邪魔しております!」
リビングの木製のベンチに座っている男性と、台所で何かをしている女性が、同時にこちらを向いた。双子のご両親、だ。
青い花柄のワンピースを着た女性と、白のポロシャツにベージュのパンツの男性。二人とも派手ではないものの、アクセサリーや時計はキラキラしている。お金持ち、だ。
双子は、どちらかと言えば、お母様似なんだなとすぐわかった。目元がそっくり。鼻はお父様に似ているのかも。
「あら、あなたが月野さん?」
「はい、月野あかりです。でも、どうして私の名前」
「健吾から聞いたよ。翔吾の彼女だと」
なるほど、健吾くんはそう二人に伝えたわけか。翔吾が軽井沢の別荘に女を連れ込んでいるぞと口を滑らせて、二人をこちらに向かわせたんだな。
翔吾くんがいないのにここで「彼女です」と宣言するのも憚られて言い淀んでいると、思わぬところから助け舟がやってきた。
「あ、ねぇ、あかりちゃん」
「はい」
「これ、めちゃくちゃ美味しそうなんだけど、食べてもいいかしら?」
台所でどうやら昨日のご飯の残りを見つけたらしいお母様が、目をキラキラさせて私を見つめてくる。
「豚汁ですね、いいですよ。温めます。あ、でも、コーヒーをお出ししようと思っていたのですが」
「コーヒーよりこっちを食べたいわ、私。ご飯もあるかしら? 私たち、お昼食べていないのよ」
「あ、じゃあ、昼食の準備をしますね。少し待っていただければ」
「作ってくれるの? わぁ、嬉しい!」
お母様は嬉しそうにお父様のベンチへ駆け寄り、何か報告している。
翔吾くんと二人だと思ってそんなに多く作らなかったから、今あるものをお出しするとして。ご飯も四人分くらいはある。昨日準備してあった鮭とキノコのホイル焼きと鯛の昆布締めを四人で分けよう。
それだけだと少ないから、サラダに、だし巻き玉子に、小松菜とベーコンとコーンのバター醤油炒めに……まぁ、何とかなるでしょ。

