この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
君がため(教師と教育実習生)《長編》
第11章 【回想】里見くんの決断
「里見くん、私と付き合わない?」
「付き合わない」
「即答だねぇ。テキストはいらないの?」
「先輩からもらうよ。じゃ、さよなら」
手早く荷物をまとめると、大きくため息をつく。勉強場所をまた見つけなければ。
本当に、馬鹿な女。
食堂のコーヒーに玉置珈琲館のブレンドコーヒーが使われているから、ここが気に入っていたのに。最悪だ。
「ちょっと、待って! 里見くん!」
椿が慌てて追いかけてくる。
あぁ、もう、本当に迷惑だ。そのテキストならあげるから、ついてこないで欲しい。
「私、本当に里見くんのことが好きなの!」
「俺は好きじゃない」
「知ってるよ、しの先生のことまだ好きなんでしょ?」
俺は早歩きで逃げる。椿は小走りで追いかけてくる。
迷惑だ。とてつもなく迷惑だ。
「私、二番目でいいから!」
一番になろうともしない人間の言葉に耳を貸す道理はない。
なんで、好きな人を前にして「二番目でいい」なんて言えるんだ? 失礼だろ。相手にも、自分にも。
もう少し、自分を大事にしろよ。「あなたの一番にして!」くらい、言えよ。
馬鹿じゃねえの。
俺は最初から、一番しか目指さない。椿の考えは、受け入れられない。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


