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夢…獏の喰わぬ夢
第8章 変化
店主が出てきて一緒にレジに入る。
合間に
「朝飯食ったか?選んで奥で食べて行け」
と声を掛けてくれた。
僕は言われた通りにして、その後、いつもの電車に乗るギリギリまで店を手伝った。
電車に乗り、窓から景色をみた。
暗いうちから見ているこの街が朝の忙しさを終えて一呼吸ついているように思えた。
隣の駅で彼女が乗ってきた。
「いつも、この電車にのることにしたのかい?早くない?」
「だって、あなたと話しながら行く方が楽しいもの。」
「それは光栄だな。」
彼女がにっこり微笑んだ。
慣れるというのか、初めのうちは、
どう思われるかあれこれ気にしてどぎまぎしていたが、
自分を受け入れてもらえる自信がついたのか、自然に振る舞えるようになってきた。
彼女を愛おしく思い、いつでも抱き締めていたいのは変わらないのだが。
電車の中で密着していても、どうしようもなく興奮してしまうのもおさまってきた。
「ねぇ、図書館に今日行こうよ。山登りする夢みて、気になっているの。
アルプス一万尺のうた知ってる?」
「手遊び歌の?」
「そう、蟻がリュック背負って登山するって、そんな途方にくれるほど歩いたわ。」
「蟻になったの?」
「いつも昆虫になる訳じゃないわ。」

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