この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夢…獏の喰わぬ夢
第8章 変化
彼女はずっと無言で上へと飛んでいく。どこへ行こうとしているのか。
雲に囲まれ始めた時、僕は彼女に訊いた。
「どこに行くの?君はどこに行こうとしているの?」
不安が大きくなり、揺れはじめる。
彼女はしっかり飛んでいるのに、グラグラと揺れている。
「ねぇ、終わったよ?ねぇ。」
グラグラとしていたのは、彼女が僕を揺り動かして起こしていたのだ。
「どこに…」
僕は疲れて眠ってしまっていた。
寝ぼけたまま、夢の続きの言葉を口にした。
彼女が物珍しそうに僕を覗き込む。
「君が天使になっていた。空を自由に飛んでいたよ。」
彼女は少し困った顔をしている。
「ねぇ、教室よ、ここ、」
やっと意識がはっきりしてきた。
反対隣りの人が僕が出るのを待っていた。
「ごめんなさい。」
彼女が代わりに謝り、僕を引っ張った。
僕もようやく事態がわかり、急に恥ずかしくなった。
隣りの人にぺこりと頭を下げ、そそくさと教室を後にした。
「ごめん。君に起こされて余計に混乱した。
教室にいるってすっかり忘れるほど眠ってしまってたなんて。」
彼女は笑っていた。
「珍しいわよね。いきなり天使だったなんて言われて恥ずかしくなっちゃった。」
と少し嬉しそうに言った。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


