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タワーマンションの恋人
第10章 * シュウタ

「今まで、ずっとそうやって受け入れてきたから、色んなこと。」
滑り落ちるように口から漏れたその言葉を彼は見過ごさずに、しっかり拾ってくれた。
「……全部、運命のせいにして受け入れてきたんだ。」
「運命のせいにしちゃえば、誰のことも責められないし、受け入れる以外の選択肢がないから…。」
そう答え終わると彼と目があった。
「その運命って…すごく前向きにも聞こえるし、すごく後ろ向きに聞こえるね。」
落ち着いた声で言ったあと、クスッと笑うような気配がして顔を上げればやっぱり彼は笑っていて。
少し重た目な前髪から見える瞳は優しくも見えたし、悪戯っぽくも見えた。
「わたしは、どっちかっていうと、後ろ向きかもしれないなぁ。」
「後ろ向きな運命かぁ…。今まで、どんなことにそうやって折り合いつけてきたの?」
そう尋ねられて、彼の瞳を見つめ返せば口角がふわりと上がった。
その不意に見せられたら柔らかそうなその表情に、心のガード緩んでしまったのかもしれない。
「わたしは…」
「うん。」
この場所に来て、家族のことを話したのは、
彼が初めてだった。
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