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明治鬼恋慕
第4章 鬼狩り

「…いい加減に睨み合いはやめてよ」
芝居屋の舞台がある場所まで来た二人と…一匹。
家屋が並んでいた道から離れて、田んぼの中の抜け道を進む。
どの田んぼも収穫が終わったばかり。刈り取られた稲の切り株が残るだけだ。
その上をトンボの群れが不規則に飛行して──
シロと睨み合う焔来の鼻をかすめた。
「見て、見て、焔来」
「あの辺りに人が集まってますね」
道の突き当たりに人だかりがある。
千代は歩みを早め、落ちた稲穂をまたいで輪の中へ飛び込んだ。
ドンッ
「きゃ…」
「ほら、危ないですよーっと」
すかさず焔来は彼女の横に立ち、村人の波から身をていして守る。
村一番の男前からそんなことをされれば、千代が照れるのも当たり前だった。

