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明治鬼恋慕
第12章 陰間茶屋

だが手足に力がはいらない。
「…ハァっ、ほどけ…!! これを──縄を、解け…ッ」
声をあげるも、掠れてしまう。
力ない声は誰にも届かない。
それは腹の怪我が原因ではなかった。
「…はぁ……は、ぅ……ッ…ハァっ、ハァ」
この部屋に閉じ込められてから数刻が過ぎ…
徐々に徐々に、リュウの身体を異変が襲っているのだ。
目頭が熱い。肌が…栗立つ。
「…はぁ‥‥僕を ここから…出せ…‥!……下衆な人間、め……!!」
リュウは焦燥の汗をこめかみに浮かべ、瞼をぎゅっと閉じた。
人間への怒りが腹の中で暴れているのに、それをぞんぶんに声にできない今の自分に憤る。
「こんな所に…っ…いるわけにはいかないんだ!…‥ハァっ‥僕 は、…焔来を‥…助けに……!!」
焔来を助けに行かないと
「焔来に 何か、あったら…‥」
絶対に許さない
リュウはもう一度、仰向けの状態で激しくもがいた。
手足を拘束する縄が畳と擦れて床に傷を付ける。

