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明治鬼恋慕
第11章 夜叉

ハッとした父さんをひと睨みして、俺は後ろへ振り返り、風呂敷を抱えたまま走り出した。
このくらいの自分でいないと…足が動いてくれなかった。
今まで楽しかったとか
二人の子供に生まれてきて良かったとか
言いたいことは山ほどあるけれど、それを声に出してしまったら…きっと俺は動けなくなる。
赤ん坊みたいにわんわん泣いて、荷物なんか放り出して父さんに抱き付いて…
そうなるのが目に見えているから、俺は黙っていた。
『 焔来…っ…どうか、人間を恨まないで 』
母さんの声が追いかけてくる。
届いた言葉から、俺は必死に逃げる。
そんなの…無理だよ。
恨まないなんて、無理だよ。
だって人間は……俺から両親を奪ったんだ。
俺の大切な人たちを──殺したんだ。
───…

