この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第46章 得れば失う、失えば得る
「……レオンは…?」
微かに聞こえたその声にハッとし振り返る
「ミゲル! 気が付いたのね!」
「レオンは……?」
再度同じ質問を繰り返すミゲル。
「隣の部屋にいるわ。ルチアーノと話してる」
「そう、か……」
主人の安全を確認しようやく安心したのか、ミゲルは大きく胸を上下させた
「俺はどのくらい眠っていた?」
「ほんの数時間よ……」
起き上がろうとするミゲルを支え、答えながら水を差し出す
「数時間…たった数時間か……」
長い夢を見ていた
二十年間の、長い夢。
「ミゲル、どこか痛むところはない? 何か……」
「いや、大丈夫だ。もう何ともない」
「……そう」
笑って返すミゲルから目を逸らしてリリアは俯向く
それは単に落ち着きない彼女の態度が可笑しかっただけなのだが、彼女の目にはそうと映らなかった
ミゲルは僅かに首を傾ぐ
「どうした? レオンがいなくて拗ねてるのか?」
「違うわよ!」
ただの冗談に本気で怒ってしまうのは、そうしないと涙が溢れてしまいそうだったから。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


