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果てのない海に呑まれて
第33章 傍に居たい人
“辛いのは私を虐げる彼の心じゃない”
「失礼致します」
リリアの部屋に入りブリジッタは丁寧に頭を下げた
「お湯をお持ち致しました」
「ありがとう……」
どこか上の空な彼女を見ながら入浴の準備を進める
「……お辛いでしょうね。大切な方に突き放されるのは……」
「え?」
リリアはやや面食らった顔で彼女を見た
「レオン様のことですわ」
「……」
そして無言で服を脱ぎ始める
「リリア様は剣を持ち歩いていらっしゃるんですか?」
「……!」
ブリジッタは太腿に取り付けられた短剣を見て少し驚いたようだ
「え、ええそうよ。いつどんなことが起こるか分からないからって、レオンが持たせてくれたの」
鈍く光る劍〈ツルギ〉を外すと、リリアはそれをそっと机に置いた
そして用意された桶の中に身を沈める
「お熱くありませんか?」
「ちょうどいいわ、ありがとう」
「……」
「……」
ブリジッタがリリアの背中を流す間、奇妙な沈黙が二人を包む

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