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果てのない海に呑まれて
第30章 主の姿
「誰……?」
船尾から、小さく尋ねる声がした
「……!」
「レオン……?」
落ち着いてみれば常に感じる、窺うような息遣い。
「ハ…」
ミゲルはらしくもなく取り乱した自分を自嘲するように、だが少し安心したように小さく笑った
「……俺だ」
「ミゲル……」
ようやく誰だか分かったリリアが扉を開ける
「馬鹿かお前は!」
「……!?」
だが突如放たれた叱責に驚いて後退った
声は何故か囁くように小さいが、その怒りが伝わるには十分で。
「……?」
しかもその怒る様子がいつもとどこか違う
心配させるなというような瞳。
「誰とも分からないのに自分から声を掛けるな!」
それはまるで、レオンと同じ–––。
「ど、どうしたの……?」
戸惑うリリアに説明もせずミゲルは彼女の手を取った
「早く来い。ここから離れる」
「え!?」

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