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果てのない海に呑まれて
第21章 寄せては返す–––
「……おい」
顔を伏せていた彼女は、聞き覚えのある声にびくりと肩を震わせた
ぐいと涙を拭い、振り向かずに真っ直ぐ前を見る
「何かしら?」
「話がある。少し来てくれ」
「……」
断ることなど出来はしない
リリアは小さく息を吐き、ミゲルの後について下甲板へと降りていった
「今日のことだが……」
「分かってるわ」
思った通りの切り出しにリリアは彼を遮る
皆港で各々の仕事をしていて、階段裏で話す二人の会話を聞く者はなかった
「私はレオンに従わず勝手なことをした……追い出されて当然だわ」
「追い出す? ちょっと待て、レオンがそう言ったのか?」
「……? いいえ?
でも私は彼の疑いを深めるようなことをしたから……もうファルツにはいられない。そうでしょう?」
「……ハァ」
ミゲルは大きくため息を吐き天井を見上げた
「確かに俺はお前を疑っていた。今だって完全に信用したわけじゃない。
そしてレオンにも常に疑って掛かるよう忠告していた」
オレンジをくれた時も、祭りを見て回った時もーーー
リリアの眉が苦しげに寄せられる

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