この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
果てのない海に呑まれて
第11章 救い
陽が傾き出し、市場を行き交う人が段々に減ってきた
商人たちも布を下ろして店仕舞いを始める
「そろそろ帰るぞ」
ミゲルがそう言って立ち上がり、リリアもそれに続いた
「これどうしたら……きゃっ!」
食べ終わったオレンジの皮の始末に困っていた彼女の傍を、何かがサッと通り過ぎた
「な、なに?」
訳も分からず足元をきょろきょろと見回す
最後にふと前を見ると、一人の子供がミゲルの腕の中でもがいていた
「放せっ! 放せよっ!」
「そんなもの食べても腹の足しにはならないだろう」
「お前にはカンケーねーだろっ! こんなんでも食わなきゃ生きていけないんだよ!」
見た目には七、八歳だろうか
小柄なその男の子はミゲルから逃れようと暴れるが、ミゲルはびくともしない
「お前、名前は」
むしろ落ち着いた様子で質問など始める始末だ
「はぁっ? なんでそんなこと……」
「良いから答えろ」
ミゲルの低い声に気圧されてビビる子供
“子供相手にそんな言い方しなくても……”
そう思うがリリアの方も怖くてそんなことは言えない

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


