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第4章 化猫奇譚【陽炎】

「市八ッ⁉︎」

サチの尋常でない声に、八尋も飛び出してきた。

今年八歳になる息子の市八が、青あざと擦り傷をしこたま作って家の前に立っていた。

手に一匹の猫を抱えているが、気の立った猫は市八の手に爪を立て、噛みついていた。

「早くそんな猫捨てなさい！」

サチは金切り声を出すが、市八は黙ったままかぶりを振る。

「市八？どうしたの？」

「コイツ…手当してやりたいんだ」

猫の尻尾が無惨に切られ、その痛みに気が狂って保護しようとした市八の手に噛みついているのだった。

「誰がこんな酷いことを…」

「嘉助と、太吉と、一蔵…」

「またあの悪餓鬼どもか…」

八尋が溜息を吐く。