この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
木之花ノ夜想曲~夢語り~
第26章 "考"

瑠衣は、もどかしさに苛つきながらも、見守るしか無い自分に腹が立つ。
自由ならば、とっくにどうにかしている…
その前に、高杉を殺しているだろう。
「今日は風が強いから、当たりが有るかもと思ったんですけどね」
「必ずとは限らんだろう」
「それは‥そうですが…」
放火は相手の気分次第か…
守る側は、地味な作業の繰り返しになる。
(何だか現代の刑事ものを見て、体験している気分だ………)
瑠衣が何故そんな事を知っているかはさて置き、本当に張り込み状態がずっと続いている。
"ガサッ…"
「「・・・・・・・」」
少し離れた所から聞こえる物音に、瑠衣と斎藤は素早く気配を消して、そっと近づく。
其処には、十人程の浪士が道の外れを急いで歩いている。
瑠衣と斎藤は無言で頷き合い、浪士達の後を追った・・・
暫く進むと、浪士達は他の浪士と合流して、総勢二十人程になってしまった。
自分達は囮で、捕まえる役目では無い、監察方と決めた場所に印しを置きながら後を追って行く……
(何処まで行く??)
既に京の街中を抜け、山道に入ろうとしている。
余り遠くなると不味い、監察方と取り決めた場所に、山の方角は無い…
"パキッ!!"
その時、斎藤が山道に足を取られ、太い木の枝を踏んでしまう!!
(不味いっ!!
どうする!?)
二十人程の浪士達‥相手が多すぎる!!
"
鬼"相手のようにはいかない、人間相手に"神足"や"神撃"は余程の事が無いと使えない。
「斎藤さん、こっち…」
瑠衣は斎藤の手を引き、有無を言わさず山道を抜け、路地裏の方に入って行く……
それを追う浪士が十人程・・・
路地裏を抜け、竹林が生い茂る林に入った。
其処には廃寺が一軒ある、廃寺の外の壁の前で止まった瑠衣と斎藤、勿論考えがあっての事だ。
追う浪士達も間近に迫っている・・・
「斎藤さん、今は何も言わず自分に従って下さい、後で軽蔑されても、斬られても構いませんので…」
「何!?」
小声で小さく斎藤に話した後、瑠衣は斎藤の首に自分の両腕を絡め、いきなり斎藤に口付けした!
「んっ!?」
斎藤は意味が分からず何も出来ない…
既に浪士達が周りを囲んでいるこの状況。
瑠衣は唇を離し、浪士達にも聞こえる様な声で斎藤に話し出した・・・

