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木之花ノ夜想曲~夢語り~
第21章 "術"

珍しく静かな京の街中である……
暫く屯所に向かって歩いていると、急に瑠衣が立ち止まった。
「一人…」
目付きが鋭くなり、渋い顔をして何かを探っている…
(かなり注意深く気配読みしていますね)
総司は邪魔にならない様に、自分の気配を消して瑠衣の様子を見守る事に…
「・・・・・
大当たりな奴ですね…
この間の様な外法の符の力は感じない…
やられたものは倍返しといきますか!」
「…という事は高杉晋作!?」
「えぇ-」
瞬間瑠衣も気配を綺麗さっぱりと消した…
そして、袋から符を一枚取り出し……
「総司、袋を持っていて下さい」
ポンと袋を総司に渡し、瑠衣は屋根の上に飛び上がる。
「ちょっと仕返しして来ますー」
そう言って、身軽に屋根の上から姿が消えた…
(だから、それが心配だと言っていますのに…)
総司は小さく溜め息を吐くと、瑠衣の後を追い出し始めた・・・
夜の京の街を一人歩く高杉、周りからは危険と言われるがそんな事は知った事じゃ無い。
「ふん、何奴も此奴も"鬼"如きに保守的に成りやがって…」
長州方にも"鬼"の情報は入って来ている、勿論それで犠牲者が出ている事も…
あの女忍が寄越した"鬼"除けの札、流石に全員に回すだけの枚数は無い、寄越したのは五枚‥内一枚は自分が所持している。
「そういえば壬生浪は何故"鬼"に襲われない??」
毎夜巡察と称して街を歩いているが、襲われ犠牲が出たとは一切聞かない。
「奴等に何かあるのか?」
疑問が次々に高杉を襲う……
確かに、壬生浪に関しては謎の部分が多い。
良く聞く市中見回りの他に裏があるのは確かだが、その情報は厳重に管理され、間者として忍び込ませている手の者でも、真相に行き着く前に発覚し殺されいる。
長州だけでは無い‥
何物かが、その情報に手を出せば犠牲は次々に増えていく…
多分壬生浪の一握りしか知らない情報なのだろう、だから発覚もしやすい。
「ちっ…
何があるって言うんだ…」
「くく…
知りたいか??」
突然屋根の上から声が聞こえる、気配は全く無かったのにだ。
「何者だ?」
高杉は屋根の上を見る。
「…お礼参り…」
屋根の上には、あの橘という女が座って此方を見下ろしていた。

