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水流金魚
第3章 溺れる金魚

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「ただい……って、うわっ?! どうしたの?」
急に後ろから抱き付いてきた咲ちゃんに驚いて、買い物袋を落としてしまう。
「……ねぇ、優祐って前に言ってた年上の人?」
「えっ……」
「ごめん。スマホ忘れてて鳴ったから気になって。ダメだよ、パスワード、俺のパスワードなんかにしてたら。……期待、しちゃうよ?」
「期待していいよ」
「じゃあさ、行かないでよ、旅行。嫉妬しちゃうよ」
「……そんなこと言われても、前から約束してたし」
咲ちゃんはぎゅっと強めていた力を緩めた。
「そっか。そうだよね……。俺が止める権利なんてないよね。旦那さんでも彼氏でもないもんね。俺ってさ、一体、花さんのなんなんだろうね。なんて。ごめん、今日はもう一人にして欲しい」
「分かった。ごめんね」
「こっちこそごめん。送ってくね」
車の中では一言も話すことはなかった。こんな中途半端なことをしていてはいけない。そう思った私はある決心をした――。

