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小田桐菜津子と七つの情事
第6章 痛みを覚えた六人目
やがて射精のタイミングが近づいてきた。
おそるべき速さで、私は絶頂を迎えようとしていた。
普段なら考えられない速さだ。
しかし私は、急いでいた。
少しでも早く、この状況から脱出したかった。
中は、中はダメーー。
遠くでそんな声が聞こえた。
何を言っている?
何の話だろう。
私は激しく腰を振り、女の性器をきびしく打ち据えた。
頭の中ではなぜかワグナーの行進曲が流れていた。二頭立ての騎馬車を駆って、地獄の業火をすり抜けて行く。
早く、早く。
そして、私は絶頂した。
脳裏にスパークが走り、目が眩んだ。
東京に残してきた女たちが、目蓋に浮かんだ。
すまん、綾。
すまない、歩美。
私はこの見知らぬ女の膣の中に、激しく射精した。
それが正しいことなのかどうかは、私のあずかり知らぬことだった。
女は私の下で組み敷かれたまま、表情のない目をしていた。
見るまい、と思いながらその目を見た。
涙の雫がゆっくりと膨らみ、表面張力の限界で弾けると、そのまま顔の脇をゆっくり滑り下りていった。
私はシャワー室に歩き去った。
時間をかけて丁寧に、身体に残った女の気配を洗い流した。
部屋に戻った時、案の定、女の姿はなかった。

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