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×アリエナイカノジョ×
第6章 ホンネの一コマ
ダメだと分かっていた。
分かっていたから、いつも遠くで眺めていた。
美穂ちゃんも他の人も、パッとしないなんて言うお父さん。
それでも、紗英にとっては格好いいお父さん。
お母さんが再婚したからお父さんになってくれている事も分かってる。
お母さんが好きだから結婚したんだって分かってる。
相思相愛だから、あそこで抱き合っていたのも分かってる。
紗英は子どもとしか見られてないって分かってる。
分かってる。
みんな分かってる。
頭では理解している。
理解している筈なのに、心のざわめきは止まらなかった。
「はぁっ…はぁっ…はぁっ………」
息が苦しい。
これだけ全力疾走したのなんて、体育でもやった事が無い。
汗も流れてる。
いつも見かけを気にして掻かないようにしていたのに。
体も重い。
どれだけ走ったのか分からない。
「……はぁっ………」
もうダメ。
傍に立っている樹に背中を預けて座り込んだ。
「…はぁっ……はぁっ……は、葉山…さん………」
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